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2 0 1 8 年 3 月 1 6 日
ビール大手各社の 17/12 期決算の注目点
ビール大手各社(サッポロホールディングス(サッポロ)、アサヒグループホールディングス(アサヒ)、
キリンホールディングス(キリン)、サントリーホールディングス(サントリー)の 4 社)の 17/12 期決算
および 18/12 期業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(JCR)の現況に関する認識と格付上の注目点
を整理した。
1. 業界動向
少子高齢化による飲酒人口の減少や一人あたりのアルコール消費量の低下などを背景に、国内の酒類市場
は厳しい状況が続いている。ビール類は同市場で最大のボリューム(数量ベース)を占めるが、需要は 94
年をピークに減少している。
17年のビール類(ビール、発泡酒、新ジャンル)の課税出荷量(国内5社合計
(※1)
)は4億407万ケース
(1ケース:大瓶20本換算)と、前年比で2.6%減少した。12年から15年にかけては各年とも前年比1%前
後の減少に留まっていたが、17 年は 16 年に続き前年比 2%以上の減少となり、縮小ペースが再度、加速し
た格好となった。ジャンル別ではビールが前年比 2.9%減、発泡酒が同 4.0%減、新ジャンルが同 1.5%減と
なり、2年連続で 3ジャンル全てが前年を下回った。17年は国内市場の構造的要因に加え、6 月に改正酒税
法が施行され量販店等における店頭価格が引き上げられたことや、夏場に関東地区が天候不順に見舞われた
ことなどが大きなマイナス要因となった。
17 年のビール類の各社のシェアは、1 位アサヒ 39.1%、2 位キリン31.8%、3位サントリー16.0%、4 位
サッポロ12.1%となっており、各社の順位に変化はない。16年シェアとの比較ではアサヒ、サッポロ、サン
トリーが小幅上昇となったのに対し、キリンは前年比で 0.6 ポイント低下した。ジャンル別では、ビールは
アサヒが、また、発泡酒はキリンがそれぞれトップシェアを守った。一方、新ジャンルはこれまではキリン
がトップシェアを維持していたが、17年はアサヒが僅かながらキリンを上回り、初めてトップに立った。ま
た、サントリーが新商品効果などでシェアを高めた。この結果、新ジャンルのシェアはアサヒ、キリン、サ
ントリーの3社が約3割で拮抗する形となり、消費者の低価格志向などを背景に競合が厳しさを増す形とな
っている。
※1 アサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビール、オリオンビール
2. 決算動向
17/12期の4社合計のEBITDAは9,000億円台に乗った
(※2)
。00年代を通じ同指標水準は5,000億円前後
で推移していたが、10/12 期に 6,000 億円台となり、以後、順調に拡大。業界各社で M&A が活発化して以
降、安定した成長軌道を辿っている(図表1)。
個社別の17/12期業績ではサントリー、アサヒ、キリンの3社が増収増益
(※3)
で着地したが、サッポロは
増収ながら営業減益を余儀なくされた(図表 2)。サントリーは 17/12 期調整後営業利益が 2,554 億円と、
16/12期に対し3.2%の増益となった。主要事業が概ね堅調に推移したことが主因となった。また、米国の法
人税引き下げを受け、ビーム社買収時(14年5月)の商標権に係る繰延税金負債の一部取り崩しを行ったた
め、最終利益は900億円超、押し上げられた。アサヒは事業利益が 16/12期1,484億円から17/12期1,963
億円と、3割以上の増益を確保した。欧州ビール事業(西欧および中東欧)のM&A効果で国際事業の規模が
大きく拡大したほか、既存の各事業でも主力ブランドが概ね堅調に推移したことなどが、好業績の要因とな
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が12期ぶりに200億円台に乗ったが、17/12期は同水準を下回った。主力の国内酒類と不動産はそれぞれ安
定して 100億円以上の営業利益を確保したものの、ベトナムビール事業や北米および東南アジアの飲料事業
の採算悪化が響いた。
18/12 期はサントリー、アサヒ、キリンが増収増益
(※3)
を見込む。このうち、アサヒについては中東欧ビ
ール事業の通年寄与で前期比 12.0%の増益予想となっている。なお、サッポロは同期から国際会計基準の任
意適用を予定しているが、実質的に増収営業増益予想となっている。各社の期初予想を前提とした場合、4
社合計のEBITDAは約1兆円になると見られる。
成長投資の実施時期や事業ポートフォリオの違いなどで財務構成は4社間で差があるものの、いずれも改
善に向けて適切にコントロールされている。サントリーはビーム社買収後の 14/12期(日本基準)にネット
DERが 1.5倍となったが、17/12期末では1倍未満に低下した
(※4)
。アサヒは 15/12期末(日本基準)のネ
ットDERは0.4倍であったが、16年10月および17年3月のM&Aで有利子負債が大幅に増加し、17/12期
末では1倍台に上昇した。ただ、有利子負債は中東欧ビール事業買収直後の17/12期第1四半期末に1.5兆
円となったが、17/12 期末では 1.2 兆円にまで削減された。両社ともノンコア事業の売却なども通じ有利子
負債の圧縮を進めている。キリンはブラジル子会社の減損処理などで15/12期末(日本基準)にネットDER
は 1 倍超となったが、以後は改善が進んでいる。サッポロは不動産賃貸事業を手掛けるため有利子負債水準
が高いが、ネットDERは12/12期末1.9倍を直近のピークとして、17/12期末では1.3倍に低下した。
※2 アサヒは16/12期から、サントリーおよびキリンは17/12期からIFRS適用。サッポロは18/12期第1四半期
からIFRS適用予定。
※3 サントリー、アサヒ、キリンは酒税込み売上収益。18/12 期は 4 社とも酒税込み売上収益。利益はサントリ
ーは調整後営業利益(営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いた数値)。アサヒおよびキリン
は 事 業 利 益 ( 売 上 総 利 益-販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 )。 前 期 と の 比 較 で は 、 そ れ ぞ れ 同 じ 会 計 基 準 ベ ー ス で 比
較。
※4 ハイブリッド調達の資本性考慮
3. 決算における格付上の注目点
各社の18年のビール類の販売計画では、アサヒが前年比1.3%減、サントリーおよびキリンが微増、サッ
ポロが前年比 1.9%増の計画となっている。ただ、18 年も国内の市場環境は厳しい状況が続くと考えられ、
ビール類の総需要は縮小が続く可能性が高い。期初計画どおりの販売が確保できるかが、ポイントの一つで
ある。これに関連して、18年春に各社でリターナブル容器(樽および瓶)商品の値上げが予定されている。
業界では 08 年に原材料費の高騰を理由とした値上げが行われたが、今回は流通コストの上昇がその理由と
なっている。ただ、値上げに関して 4 社の歩調は概ね揃っているが、サントリーについてはザ・プレミア
ム・モルツの樽商品は価格改定を行わない予定となっている。こうした対応の差が、シェア状況に影響を及
ぼす可能性もある。もっとも、酒類市場の多様化や各社の事業多角化で、ビール類の販売動向だけが業績の
方向感を左右するものではなくなっている。需要が伸長している RTD なども含めた酒類全体の販売動向が
重要となる。個社別では、サントリーおよびアサヒは過年度の大型 M&A による効果を着実に拡大できるか
が、引き続き、大きな注目点である。また、サッポロは主力事業以外の不採算・低採算事業の立て直しを図
れるかが、注目点となる。このほか、近年はキリンを除く各社で海外事業のウェイトが高まっており、為替
動向にも留意する必要がある。
現状 、大型 M&A の具体的な予 定はなく、各 社とも財務構 成は改善方向 が維持される と考えられる 。た
だ、中長期的なグループ成長を図るため、今後も大型 M&A が実施される可能性は高い。これに向け、財務
基盤の改善・強化を着実に進めていけるかが、業界全体の最大の注目点である。
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(図表1)ビール大手4社合計のEBITDA推移
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12 10/12 11/12 12/12 13/12 14/12 15/12 16/12 17/12 EB ITDA (億円)
(期)
※1 日本基準は営業利益+減価償却費+のれん償却費、国際会計基準(IFRS)は売上総利益-販管費+償却費
※2 アサヒは16/12期から、サントリーおよびキリンは17/12期からIFRS適用。サッポロは18/12期第1四半期か
らIFRS適用予定
(図表2)ビール大手4社の連結業績 (単位:億円)
日本基準
IFRS
売上高
売上収益( ※ 1)
営業利益
事業利益( ※ 2)
─
調整後利益( ※ 3)
─
営業利益
最終利益 ( ※ 4)
最終利益 ( ※ 4)
サッポロ HD 16/12 期 日本基準 5,418 202 ─ ─ 94
(2501) 17/12 期 日本基準 5,515 170 ─ ─ 109
18/12 予 IFRS 5,558 212 ─ 187 111
アサヒグループ HD 16/12 期 IFRS 17,069 1,484 ─ 1,368 892
(2502) 17/12 期 IFRS 20,848 1,963 ─ 1,831 1,410
18/12 予 IFRS 21,400 2,200 ─ 2,000 1,420
キリン HD 16/12 期 IFRS 18,539 1,819 ─ 1,965 1,489
(2503) 17/12 期 IFRS 18,637 1,943 ─ 2,110 2,420
18/12 予 IFRS 19,600 1,960 ─ 1,940 1,550
サントリーHD 16/12 期 IFRS 23,584 2,437 2,475 2,528 1,856
(─) 17/12 期 IFRS 24,202 2,523 2,554 2,536 2,114
18/12 予 IFRS 25,000 ─ 2,580 2,640 1,260
※1 酒税込み売上収益
※2 サッポロHD(18/12予)、アサヒグループHD、キリンHDは各社公表値(売上総利益-販売費及び一般管理費)。
サントリーHDは左記と同基準による数値
※3 調整後営業利益。営業利益から非経常的な要因により発生した損益を除いた数値(サントリーHDのみ)
※4 日本基準は親会社株主に帰属する当期純利益、IFRSは親会社の所有者に帰属する当期利益
(出所:図表1・2とも各社決算資料よりJCR作成)
【参考】
発行体:サッポロホールディングス株式会社
長期発行体格付:A- 見通し:安定的
発行体:アサヒグループホールディングス株式会社
長期発行体格付:AA- 見通し:安定的
発行体:サントリーホールディングス株式会社
長期発行体格付:AA- 見通し:安定的
■留意事項
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■NRSRO 登録状況
JCRは、米国証券取引委員会の定めるNRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の5つの信用格付クラスのうち、以下の4クラス に登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
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